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大阪高等裁判所 昭和31年(く)16号 決定

本籍 茨城県結城市大字○○○町○○○番地の二

住居 不定

少年 無職 紺田昭三(仮名) 昭和十一年八月五日生

抗告人 少年

主文

原決定を取消す。

本件を神戸家庭裁判所に差戻す。

理由

本件抗告の要旨は少年は昭和三一年四月二七日神戸家庭裁判所において中等少年院に送致する旨の決定をうけたが、少年には東京都台東区○○町に叔父伊○○吉がおり、兄○一も同居しているので、調査官に対し同所に連絡してくれるよう申し出たが、番地が不明という理由で聴入れられず、同所について調査することなしに原決定をうけるに至つたが、少年としては肉親立会の上審判をうけたいので叔父と兄を呼び出すか、又は本件を東京家庭裁判所に移送の上さらに審判せられたいというのである。

よつて記録を調査するに、添付の少年調査記録中の少年調査官補牧野孝一の昭和三一年四月二四日付調査報告書によると、叔父伊○○吉は東京都内に居住するが地名は知らぬという、少年は非行後反省心乏しい点から累非行の危険大である旨記載があるが、一方昭和三一年四月二四日付結城市長名義の身上調査書があつて、同書には少年の兄と弟妹が東京都台東区○○○町○丁目○○番地○○方に居住する旨の記載があり、少年の申立てる叔父とは同所に居住していることが推知されるのであり、なお神戸少年鑑別所の鑑別結果通知書には保護の適正を期するため移送を可と考えるとあることが認められる。しかるに原裁判所は叔父の所在について調査した形跡がない。少年には父母がないので、兄や弟妹の世話をしていると思われる叔父伊○○吉について詳しく少年が同人の保護の下に更生しうる余地があるか否かを知ることは少年に対する保護処分を決定するについて重要な要素となること明らかでこの調査を経た上管轄家庭裁判所に移送するか又は少年法第二三条第二項第二四条所定の適宜の決定をすべきでこの措置を欠いた原決定は著るしく不当と認められ、本抗告は理由があるので、少年法第三三条第二項に従い主文の通り決定する。

(裁判長判事 万歳規矩楼 判事 井関照夫 判事 小川武夫)

別紙(原審の保護処分決定)

決  定

少年 高○○実こと紺田昭三 昭和十一年八月五日生 無職

本籍 茨城県結城市大字○○○町○○○番地の二

住居 不定

右少年に対する昭和三一年少第八四四号窃盗、住居侵入保護事件につき当裁判所は審判の結果次の通り決定する。

主文

少年を中等少年院に送致する。

審判理由

少年は昭和三〇年一二月八日午前二時頃、大阪市○○○区○○○○○丁目○○永○○吉方住居に侵入し、同人所有の現金三五〇〇円および背広上衣、ズボン、カツターシヤツ、眼鏡各一点を窃取したもので、右所為中住居侵入の点は刑法第一三〇条に、窃盗の点は同法第二三五条に各該当するところ本件罪質、情状、家庭環境、経歴その他諸般の状況に照し中等少年院送致の保護処分に付する要ありと認め少年法第二四条第一項第三号に則り主文の通り決定する。

処遇意見

添付の本件社会記録参照

昭和三一年四月二七日

神戸家庭裁判所

裁判官 藤田尚一

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